英語力テストについて

テストの点数と使える英語力の違いを考える

2015年7月2日 CATEGORY - 英語力テストについて

Making Notes from Book

先日、書籍紹介ブログでご紹介した「英語屋さんの虎ノ巻」は英語本として、受験生にもビジネスマンにも参考になるノウハウが非常に充実しているとお伝えしました。

この本に「日本人は『英語ができない』のか?」という章があるのですが、その中で日本人がここまで受験勉強として英語を学び、試験に取り組んでいるのに、結局「英語が使えない」のはなぜかという問題提起がありました。

私たちは、日本実用外国語研究所という姉妹組織を作って、日本人のこの問題に真正面から取り組んでいます。従って、この問題についての私たちなりの理解というものを持っています。この理解については こちらの記事をご参照ください。

しかし、本書において著者のこの件に対する見方が非常に面白いと思いましたのでここでご紹介します。著者はこの国の英語の試験一般について以下のように言っています。

「この国の英語の試験ではとかく、まるで重箱の隅をつつくかのように、英語の不規則な部分を知っているかどうかを問うものとか、コミュニケーションの道具として英語が使えるかどうかとはあまり関係なさそうな問題が頻繁に出題されている。(中略)英語の試験制度を作ったり運用する立場の先生方にもよく考えていただきたい。コミュニケーション能力としての英語の力を測るのに、『他の人が知らないような知識を持っているかどうか』を尺度とした試験ばかりで評価していたら、英語を駆使して外国人とコミュニケーションをとることのできる能力を持った人材を大量に育成するのは難しいのではないだろうか。」

私は、著者のこの意見に100%賛成です。というより、私はこのことを体感的に理解していたのだと思うのです。なぜなら、私はすでにこの事実を体験的に明らかにできる機会を作っているからです。

その機会とは、ランゲッジ・ヴィレッジにおいて新設された「中学3年分の文法を2泊3日で血肉にする講座」です。この講座の様子については こちら のブログ記事をご覧ください。

この講座では全20回の講義をこなす中で、それらの内容を理解した上で毎回出てくる項目(その回までのすべての)を使った日本文を作らせ、それを英語に直すという特訓を行います。ですから、最後の方になってくるとありとあらゆる文法項目を含んだ文を文法ルールにのっとって即座に作り出す必要があるのです。

この際に心がけているのは、重箱の隅をつつくような「例外」などに神経を使うのではなく、文法の基本ルール、すなわち「原則」にのっとって文を作り出すことを「即座」にできることの重要性を参加者に理解させることです。

具体的には、keepをkeepedと言ってしまっても軽く指摘することにとどめます。むしろ、keptを思い出すことに時間を使ってしまうくらいなら、keepedと即座に言ってしまうことの方を推奨するくらいです。

しかし、逆に「現在完了進行形」「否定」「受け身」「関係代名詞の目的格」「比較級」という項目全てを含んだ英文を自らつくりだすことが求められたときに、これらの原則を間違えたり、間違えなくとも「即座」に作ることができなかったりしたときには、大問題であると指摘するのです。

これは意外に大変なことです。

文法は「原則」を理解することなど、たやすいことです。しかし、それらが複雑に絡み合った時にも、原則を貫き「即座」に文を作り出すことができるためには、それらの原則が「血肉」になっていないとできないのです。

英語を使う力を測定する際には、keepが過去がkeptであるということを知っているかどうかではなく、原則にしたがって、「現在完了進行形」「否定」「受け身」「関係代名詞の目的格」「比較級」という項目全てを含んだ英文を「即座」に自らつくりだせるかどうかを判断する必要があるのです。

keepの過去をkeepedと言ってしまうなどということはコミュニケーションにほとんど影響を与えません。しかし、コミュニケーションは「即座」なのです。その瞬間に「原則」を再現することができなければ、そこでゲームオーバーなのです。

そのことが分かれば、日本の英語試験制度に合わせた学習方法が「英語を使う力」に結びつきにくいということが良く分かるのではないでしょうか。